A. Copland 「What to Listen for in Music」を読む

コープランドの「What to Listen for in Music」(2011版)を、原文と日本語訳の両方を見てゆきます。

「マルサリスオンミュージック」を読む 第1回

ウィントン・マルサリスの名著「Marsalis On Music」を読んでゆきます。アメリカの、音楽を学ぶ子供達の為に書かれたこの本の献呈の辞は次のようになっています。 

 

For all those who continue the struggle to educate youngsters in music. 

音楽で若い人達を育むことに、日々奮闘し続ける全ての人のために 

 

原書を入手してお読みください。MARSALIS ON MUSIC  W.W.Norton & Company 

この本は次のような構成になっています。(ページ数・行数は原書) 

 

第1章 思わず足踏みをするのはなぜだろう:リズムについて(19ページ) 

メリハリ(アクセント・休符・間)、拍子、テンポ、基本リズム、シンコペーション 

 

第2章 聴きどころをのがさずに:形式について(55ページ) 

ソナタ形式:主題提示部・展開部・主題再現部 

AABA形式(32小節形式)、コーラスフォーマット、変奏曲(主題と変奏) 

ブルースとコード(和音) 

 

第3章 スーザからサッチモへ:吹奏楽とジャズバンド(93ページ) 

行進曲、ラグタイム、ラグとシンコペーションラグタイムと行進曲の共通点 

インプロバイゼーション 

 

第4章 正体不明の、でもイヤなことに敢えて立ち向かう:練習について(121ページ) 

ウィントンの練習の秘訣 

1.マンツーマンで教えてもらおう 2.予定表を作ろう  

3.目標は段階毎にいくつか作ろう 4.集中しよう 

5.肩に力を抜いてじっくり練習しよう  

6.難しい部分こそじっくり時間をかけて練習しよう 

7.常に心を込めて楽器を鳴らそう 8.自分の失敗から学べばいい 

9.ひけらかさないこと 10.自分で工夫しよう 11.前向きに物事をとらえよう 

12.何事に対しても、他とのつながりが何かある、と思ってアンテナを張ろう 

 

鑑賞の手引き(141ページ) 

 

このサイトでは段落毎に 1.全訳 2.語句・文法事項の説明 を扱ってまいります。 

 

対立・分離分断の今の時代、多くの皆様に是非お読みいただきたい名著です。 

第1回:第1章19ページから24ページまで 

 

(19ページ) 

 

僕の名前はウィントン・マルサリス。僕は君に、この本の中で、音楽の基本的な事柄との出会いの場を作ってあげようと思う。わかってますよ、「基本的な」「事柄」なんて言葉が一緒に出てくれば、何だか面倒なものが立ちはだかってくるのが、大体のお決まりだってこと。僕は君に教えてあげたい。音楽の種類が異なっていても、実は基本は同じなんだということ。そして、それがわかると、音楽はもっと楽しく、もっと興味深くなるんだ、ということを。 

(語句・文法事項:数字は行数) 

1.I want to introduce  紹介したい:不定詞(to introduce) 3.whenever you hear ~を耳にすればいつでも(whenever) 6.how fundamental elements of music are shared どの様に共有されているか:関係詞(how) 7.how understanding them can make listening to music much more enjoyable and interesting それらを理解することがどれだけ音楽を聴くことを楽しく興味深くするか:関係詞(how)、動名詞(understanding, listening)、OをCにする(make+O+C) 

(解説) 

listen:聴く(意識的に) hear:聞く(耳に入ってくる) 

 

音楽の聴き方を本で学ぶ、なんて、変だ、と思うかもしれないけれど、大抵のことは本から学べるものだ。音楽について言えば、本だけでなく、録音を聴いたり、生演奏を見たり、自分で簡単な作曲をしてみたっていいよね。この本の元になったのは、4回シリーズのテレビ番組なんだ。僕が一緒に番組作りにかかわった人達を紹介しよう。 

僕が主宰するジャズオーケストラ 

ボストン交響楽団音楽監督小澤征爾さんの指揮による、タングルウッド音楽センター管弦楽団 

チェロの名人、ヨーヨ・マ 

この本だけを読んでもいいし、番組の映像も併せて視てもいい。本の裏表紙にはCDがついているだろう。この本で触れることになる曲の音源が入っているよ。 

(語句・文法:数字は行数) 

9.It might seem strange to you, learning to hear music from a book.音楽を聴くことを本から学ぶことは君には奇妙に思えるかもしれない:仮主語(It=learning)  

仮定法過去(might) 動名詞(learning) 不定詞(to hear) 13.a series of television  

program that I made私が作った一連のテレビ番組:関係詞(that) 15.the Tanglewood  

Music Center Orchestra, led by Seiji Ozawa, who is the music director of the Boston Symphony Orchestraボストン交響楽団音楽監督小澤征爾に指導されているタングルウッド音楽センター管弦楽団:過去分詞の形容詞的用法・非制限用法(Orchestra, led by) 関係詞・非制限用法(Ozawa, who) [p.20, 3]the recordings of the music we're going to talk about私達が話す予定の音楽の録音:関係詞・省略(music [that] we) 

(解説) 

will:~するつもりだ(意志) be going to:~する予定をすでに立ててある(予定) 

 

(20ページ) 

 

音楽の世界を探検しながら、物事の共通点を探してゆくことにしよう。それは、初対面の人と会話しようとする時に似ている。相手も知っている話題を選んだ方がいいよね。話が合わないなぁ、と窮屈になるよりはマシだ。音楽は楽しむものであって、戦う相手じゃない。何せ音「楽」だから。音「学」じゃないからね。読者の皆さんにお勧めします。下手でもいいから声を出して歌ってみよう。おもちゃのラッパでいいから楽器に触れてみよう。音楽の世界は、いつだって新入りさん大歓迎!「早すぎ」「遅すぎ」は一切なし! 

(語句・文法:数字は行数) 

6.try to begin始めようとする:不定詞(to begin) 7.someone you don't know君が知らない人:関係詞・省略(someone [whom] you) 8.It's better to talk about what you have in common, rather than be stifled 君達が共有することについて話す方が窮屈な気分になるよりましだ:仮主語(It) 不定詞(to talk / to be stifled) 関係詞(what) 11.I encourage  

everyone who reads this book to sing~ to pick up私はこの本を読むすべての人に歌うことと手に取ることを勧める:関係詞(who) 不定詞(to sing, to pick up)  

(解説) 

16.kazooカズー(おもちゃの楽器) 

 

この章では、主にピョートル・イリイッチ・チャイコフスキー作曲の「くるみ割り人形組曲」を見てゆく。そして有り難いことに、この曲には、デューク・エリントンとビリー・ストレイホーンが編曲したアメリカンスタイルのバージョンがあるんだ。この曲を使って、音楽の一番基本「リズム」について見てゆこう。さて、こんなことを言うと「基本はメロディじゃないの?」と思うかもしれない。だって聞いてすぐわかるし、覚えこむのも簡単だ。気が付けば口ずさんでいるのは、メロディだしね。 

(語句・文法事項:数字は行数) 

18.Most of the music we will talk about私達が話す大半の音楽:関係詞・省略(music  

[that] we) 19.The Nutcracker Suite, composed by ~によって作曲された「くるみ割り人形組曲」:過去分詞・非制限用法(suite, composed) 20.we're fortunate to have an  

American version arranged by私達は幸運にも~によって編曲されたアメリカ版を持っている:不定詞(to have) 過去分詞(version arranged) 25.that's what we recognizeそれは私達が認識するもの:関係詞(what) 27.the part we find私達が気付けば~する部分:関係詞・省略(part [that] we) 

 

(21ページ) 

 

ピョートル・イリイッチ・チャイコフスキー 

ピョートル・イリイッチ・チャイコフスキーは、1840年5月7日、ロシアの大地主の家に生まれました。当時のロシア皇帝はニコライ一世でした。ピョートルには、兄が一人、弟が三人、妹が一人いました。一家は居心地のよい、裕福な家族でした。役人であった父は、ピョートルには弁護士になってもらいたいと思っていました。しかしピョートルは大学卒業後、しばらくの間司法官吏として働いた後、作曲の道へ転向してしまったのです。作曲家に転向後しばらくは、音楽学校で教鞭をとり生計を立てます。この頃、あるお金持ちの音楽愛好家、フォン・メック夫人が現れます。ピョートルが生涯ついに一度も会うことのなかったこのフォン・メック夫人こそ、ピョートルを、作曲だけで生活してゆけるようにしてくれたのです。ついにピョートルは、自分の作品を売った稼ぎで暮らせるくらい、十分作曲家として成功しました。 

(語句・文法:数字は行数) 

3.1840, when~1840年、そして当時は:関係詞・非制限用法(1840, when) 10.to make his living生計を立てるために:不定詞(to make) 11.Madame von Meck, whom he never metフォン・メック夫人という、彼があったことのない人物:関係詞・非制限用法(Meck, whom) 11.made it possible for him to compose full time彼が作曲ばかりいつもすることを可能にした:12.he became successful enough as a composer to live on just the money he made from selling his music.彼は自分の曲を売って作ったお金だけで作曲家として生活できるくらい十分な成功を収めた:~するくらい十分(successful enough to live) 関係詞・省略(money he made) 動名詞(selling) 

 

1893年11月6日に53歳でコレラで亡くなるまでに、チャイコフスキーが残した曲: 

交響曲七作品、その他管弦楽曲多数、オペラ十作品(最も有名なのは、1897年作「ユージン・オネーギン)、そしてピアノ曲・合唱曲・歌曲多数。 

広く知られている作品群: 

大序曲「1812年」(1880年)、幻想序曲「ロメオとジュリエット」(1879年)、バイオリン協奏曲(1878年)、ピアノ協奏曲(1875年)、そしてあの三大バレエ[白鳥の湖(1877年)、眠りの森の美女(1890年)、くるみ割り人形(1892年) 

(語句・文法:数字は行数) 

15,Tchaikovsky had composedチャイコフスキーは既に作曲していた:過去完了(had composed) 16.ten operas, the best-known of which is 10の歌劇、その内最も有名なのは~だ:関係詞・非制限用法(operas, the best-known of which is) 

 

生前チャイコフスキーは、世界に名だたる作曲家の一人となったのでした。そして自作の指揮を執り、ロシアそしてヨーロッパ全土を演奏して巡ります。1891年に渡米、ニューヨーク市カーネギーホールこけら落としでの演奏を指揮を務めました。またフィラデルフィアボルチモアでの公演で指揮を執り、演奏以外でも、ナイアガラ滝やワシントンDCといった場所も訪問しています。アメリカから、サンクトペテルブルクの自宅へ戻ると間もなく、バレエ「くるみ割り人形」に着手します。 

(語句・文法:数字は行数) 

22.conducting his music自作の指揮をしながら:分詞構文(conducting) 25.including Niagara Falls and Washington D. C.ナイアガラ滝とワシントンDCを含めて:分詞構文(including) 

 

くるみ割り人形組曲の詳細は、141ページ参照 

 

(戻・20ページ→22ページ) 

 

ブラームスの「子守唄」。このメロディの演奏を聞けば、次々と音が耳に入ってくる(楽譜1、CD1曲目)。その音のことを「音符」と名付けよう。音符には色々な種類がある。鳥の様々な鳴き声や錆びた扉の開け閉めの時の様な甲高い音から、ライオンの吠えた鳴き声や車のエンジンをふかした時の様な低く太い音まで、様々だ。 

(語句・文法:数字は行数) 

30.the name we give私達が与えた名前:関係詞・省略(name [that] we gave)  [p.22,4]an automobile engine revving轟音を立てる自動車のエンジン:現在分詞(revving) 

 

(22ページ) 

 

ブラームスの子守唄のメロディを聞けば、音が並んでいるなぁ、と思うだろう。でもこの並んでいる音は、リズムのおかげで、一定の時間の流れに乗って、まとまっているんだ。リズムがあってこそのメロディだ。メロディにくっついてこれを動かすリズムがなければ、メロディの最初の音符から次の音符へは動けない、ということだ。動けない、ということはリズムがない、リズムがなければ音楽じゃない。 

(語句・文法:数字は行数) 

9.Without rhythmto move a melody along, we would never getメロディを動かすためのリズムがなければ私達は~を得られない:仮定法過去(Without, we would) 不定詞(to move) 

 

ブラームスの子守唄の、リズムだけをスネアドラムで叩くのを聞いてみよう(CD2曲目)。メロディとはとても言えないかもしれないけれど、これだって立派な音楽だ。音楽とは、一定の時間の流れに乗ってまとまっている音のことなんだ。まとまっていれば、どんな音でも音楽だ。1,2,3,4と胸をたたくのも音楽。パソコンの一定の信号音も音楽。お互いを呼び合う鳥の鳴き声も音楽。まとまりがあるなら、それは音楽。 

(語句・文法:数字は行数) 

14.we would hardly callとても~とは呼べないかもしれない:仮定法過去(would call) 16.It could be beating your chestそれは君の胸を叩くことかもしれない:仮定法過去(could be) 動名詞(beating) 19.a group of birds calling to each otherお互いを呼び合う鳥の群れ:現在分詞(calling) 

 

日々の生活はリズムでいっぱいだ。想像してみてほしい。朝、目が覚めて、オートミールとか、何でもいい、好きなものを朝食にとって ― 僕みたいな田舎者なら、グリッツに砂糖が塩をふったやつとかね ― そしてその後出かける。外に出たとき、どんな音が耳に入ってくる? 

23.whatever you like to eat君が食べたいものなら何でも:関係詞(whateer) 不定詞(to eat) 

 

今の僕のように都市部に住んでいるなら、車の音だったり話し声だったり何でもかんでも色々な音が混ざって、耳に入ってくるだろう。これは音楽とは言わないね。こういう音を楽器で真似して鳴らしてみると楽しいかもしれないけれど、これは不快な音、あるいは雑音とも言うよね。まとまりがない。でもこのまとまりのない中から、時々聞こえてくる、渋滞にイライラしたドライバーが「プープッププー」なんて、ちょっとばかりリズムをつけてクラクションを鳴らしているのが聞こえたりすることがある。そのドライバーは、クラクションにもたれかかって、ただ単に町の騒音を更にうるさくしている訳じゃない。ちゃんとリズムをつけてクラクションを鳴らしているものだから、聞いているこちらは笑顔になって「わかった、わかった」と思ってしまう。 

27.you hear ~ people talking人々が話をしているのが聞こえる:知覚動詞+O+現在分詞(hear people talking) 29.It can be fun to imitate these soundsこういった音を真似るのは楽しいかもしれない:仮主語(It) 不定詞(to imitate) [p.24,1]you hear somebody who's frustrated by the traffic blow his car horn君は渋滞にイライラしている誰かがクラクションを鳴らすのを聞く:知覚動詞+O+原型不定詞(hear somebody blow) 関係詞(somebody who's) 5.in a definite rhythm that makes us smile and think私達を微笑ませ考えさせるちゃんとしたリズムで:関係詞(that) 使役動詞(make us smile and think) 

6.I know just how you feel私は君がどう感じているかわかる:関係詞(how) 

 

その一人のドライバーがリズムを生み出すのが聞こえれば、楽しい気分になる。それは音楽だからだ。 

(語句・文法:数字は行数) 

8.you hear that one motorist creat a rhythm君がその一人の運転手がリズムを作るのを聞く:知覚動詞+O+原型不定詞(hear motorist creat) 9.it makes you feel goodそれは君をいい気分にする:使役動詞+O+原型不定詞(makes you feel) 

 

 

次回、第2回は、24ページから32ページです。