英日対訳ミュージシャンの本

ミュージシャンの書いた本を英日対訳で見てゆきます。

「マルサリス・オン・ミュージック」を読む 第7回

第7回:第2章  聴きどころを逃さずに:形式について 

 

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展開部 

 

次は展開部。ここれは二つの主題が、文字通り、放り投げられ、ひっくり返され、ひねられることで様々な形や調に変えられてゆく。面白くなってくるし、その分ややこしくもなってくる。目まぐるしく変化してゆくから、本当に注意してついて行かないといけないぞ。さてこの部分、ハムスターの物語に置き換えると、展開部とは、新しく買ったハムスターとのドタバタ騒動みたいなものを描く処かな。こんな感じで。 

(語句と文法:数字は行数) 

1.The next section, Fantasia, is where our two musical themes are really tossed and turned into different shapes and keys次のセクションである展開部は、私達の二つの音楽の主題が実に放り投げられひっくり返されて様々な音型や調になる場所だ:関係詞(where) 8.if this were a section of our hamster story, the Fantasia would describe some type of dramatic interaction with the newly purchased hamsterもしこれが私達のハムスターの物語ならば展開部は何かしらのタイプの新しく購入されたハムスターとのドラマチックなやり取りを描くだろう:仮定法過去(if this were the Fantasia would describe) 過去分詞(purchased hamster) 

 

「ペットショップで買ったハムスターは、小さなカゴに入れて渡された。これを上着のポケットに入れたら、どうだろう、なんて思ったものだから、カゴをあけて外へ取り出してみたんだ。ハムスターはビビっていた。そりゃ、僕とは初対面だから当たり前。で、カゴを開けた途端、外へ飛び出してしまった!おかげで、あのでかいショッピングモール中を追いかけまわす羽目になったよ。やっとこさ捕まえたのが、一階まで降りたところにある「J.C.ペニー」っていう店の入り口のそば。ペニーの店に飛び込まれていたらどうなっていたことか・・・。なので、僕は「ペニー」と、そのハムスターに名前を付けちゃったよ。」 

(語句と文法:数字は行数) 

13.I wanted to see how he would fit in my jacket pocket私は彼が私の上着のポケットにどのようにフィットするか見てみたかった:不定詞(to see) 疑問詞節(how he would) [p.68, 2]I don't know what would have happened if he'd gotten into that Penny'sもし彼がその「ペニー」という店に飛び込んでしまっていたらどうなっていたか私にはわからない:疑問詞節(know what) 仮定法過去完了(what would have happened if he'd gotten) 3.That's why I named him Pennyそれが僕が彼にペニーと名前を付けた理由だ:関係詞(why) 

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わかるかな?この物語、読み手をひきつけるには、話の展開上ネタとなることを、できるだけたくさん描き込んでゆかないとね。でも気を付けて!多すぎると、死ぬほどウンザリするし、少なすぎると、訳が分からなくなる。バランスの取れたネタの量にしたいよね。音楽だって同じこと。 

(語句と文法:数字は行数) 

5.if we want people to like our story, we have to provide a lot more action to draw them inもし私達が人々に私達の物語を好きになってもらいたいなら私達は彼らを引きつけるためにより多くの行為を盛り込まなければならない:仮定法現在(if we want we have to) 不定詞(to like to provide to draw) 7.You might bore someone to death with too much story of the hamster, or give too little story and make it confusingもしあまりに多くのハムスターの話を盛りこんだら君は人を死ぬほど退屈させてしまうかもしれないし、あるいはもし盛り込む話が少なすぎてそれを混乱させるようなものにしてしまうかもしれない: 

仮定法過去(You might bore) make+O+C(make it confusing) 10.We want to say just enough to make our story balanced私達は私達の物語をバランスのとれた状態にするのにちょうど十分な量を話したい:不定詞(to say to make) make+O+過去分詞(make our story balanced  

 

作曲家が心行くまで、二つの主題に手を加えつくしたら、展開部は終わる。その作曲家プロコフィエフの、手の加え方を、いくつか見てみよう。はじめに、メイン主題を、マイナー(短調)と世間でよく言われる調で、新しいサウンドにしてしまっている(CD33曲目)。大元と、ほぼほぼ同じ聞こえ方がする。大元はメジャー(長調)だったね(CD24曲目)。 

(語句と文法:数字は行数) 

12.When the two themes have been explored to the composer's satisfaction, the Fantasia endsこの二つの主題が作曲者の満足行くまで繰り広げられたら、展開部は終わる:現在完了(have explored) 15.He begins by giving our first theme a new sound in what we call a minor key彼はいわゆる短調で私達の最初の主題に新しいサウンドを与えることで始めている:動名詞(by giving) 関係詞・慣用句(what we call) 17.That almost sounds like our first theme, which is in a major keyそれはほぼ私達の最初の主題と同じ音がする、最初の主題は長調である:関係詞・非制限用法(theme, which is) 

 

この二つの主題、一緒に演奏してみると、違いがしっかり聞こえてくる。ほとんどブルースみたいな聞こえ方だ。ブルースというのは音楽形式の一つで、これは後でまた見てゆこう(CD34曲目)。次にプロコフィエフは、メイン主題を変化させたものを、フルートとバイオリンの間で、行ったり来たりさせている(CD35曲目)。そして第二主題だ。覚えているかな?このデリケートなメロディを(CD25曲目)。ここ展開部では、全く異なるキャラになっているぞ(CD36曲目)。 

(語句と文法:数字は行数) 

20.That almost sounds like a blues, a form of music we'll learn about laterそれはほとんどブルースという後で私達が習う音楽形式のように聞こえる:関係詞・省略(a form of music [that] we'll learn) 24.Do you remember how delicate the second theme sounded?君は第二主題が如何に繊細な音をしていたか覚えているか:間接疑問(Do you remember how delicate) 

 

なぜか?それは、プロコフィエフが拍の位置を替えたからだ。主題提示部では、第二主題は一拍目が強拍だ(譜例7、CD25曲目)。で、これが二・四拍目が強拍で、しかも調まで替わるのが、ここ展開部(譜例8、CD36曲目)。一拍目に強拍、とは、水の流れに乗って舟を漕ぐようなもの。これに対し、二・四拍目に強拍、とは、水の流れに逆らって舟を漕ぐような感じだ。 

 

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そして木管楽器、それからオーケストラで一番偉いトランペットが、第二主題を強拍一拍目で鳴らし、一方、二拍目に強拍を置いてバイオリンが演奏する。流れに乗る人と流れに逆らう人が、同居しているんだ(CD37曲目) 

(語句と文法:数字は行数) 

9.We have people rowing with the current and against it at the same time私達は流れにのって舟を漕いでいる人達と逆らって漕いでいる人の両方がここで同居している:現在分詞(rowing) 

 

主題提示部にでてきたこの二つの主題を駆使して演奏を進めてゆく。これが展開部のミソだ。ショッピングモール中ハムスターを追いかけ回し、やっとのこと、一階まで降りたところだ。そしてこれを無事に捕える。この二つの主題が目一杯繰り広げられたところで、展開部は終わる。そしてメイン主題に、それも元の調(ここではニ長調)に戻る。 

(語句と文法:数字は行数) 

11.Playing with the two themes of the Statement section is the essence of the Fantasia主題提示部の二つの主題を使って演奏することは展開部の主眼だ:動名詞(Playing) 

 

「古典交響曲」の展開部、これを聴く時の聴き処、二つの主題、つまり、主題提示部で出会った登場人物が、ひねりを加えられ、放り投げられ、ひっくり返される様子だ。 

(語句と文法:数字は行数) 

19.listen for how our two themes, the ones we met in the Statement section, are twisted and tossed and turned around私達の二つの主題、主題提示部で私達が出会った主題が、ひねられて放り投げられてひっくり返される様子を聴き取ろう:関係詞・省略(the ones [that] we met) 

 

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主題再現部 

 

主題再現部、さぁ、ここまでついてこれれば、一番聞きやすい処だ。二つの主題が、元の形で再び出てくるからだ。あ、でも一つだけ異なる点がある。第二主題、これがメイン主題と同じ調になっている。第二主題も最初の処へ戻ってきてしまっているんだ。ハムスターの物語でいうならば、ハムスターはジョーンズペットショップのある五階から、ショッピングモール中を追いかけっこし、一階へと降りてきた、というわけだ。この音楽の旅も、階段を五段上がって、ぐるぐる巡り、そして五段下がって、スタートした時の調へと舞い戻る、ということ。そして、明らか「ジ・エンド」と言う終結部へとやってくる。では、プロコフィエフ作曲「古典交響曲」第一楽章を通して聴いてみよう。集中して聴くポイントは、ここまで見てきたソナタ形式だ。主題提示部から展開部、そして主題再現部、このように通ってゆく中で、二つの主題がどのように登場して繰り広げられてゆくか(CD38曲目)。 

(語句と文法:数字は行数) 

1.The Restatement section is the easiest to hear主題再現部は聞くのが最も簡単だ:不定詞(to hear) 10.Our musical journey has brought us up five steps, all around, then five steps down into the key that we began in私達の音楽旅行は私達を連れて五段階登りぐるぐる巡りそして私達が始まったところの調へと五段階下がってきた:現在完了(has brought) 12.Then comes an obvious “The End” endingそして明らかな「はい、おしまい」という終結部へとやってくる:倒置(comes an obvious) 

 

プロコフィエフのこの作品で使われているソナタ形式を聞きこなすことに慣れれば、ソナタ形式を持ち他の作品を聞いても、今までよりずっと楽に、ソナタ形式を聴くことができるようになるよ。ボール競技のルールや、ゲームソフトのやり方に、何か一つ二・三回取り組んでおくと、他のボール競技やゲームソフトのやり方も、大体予想がつくじゃない。あれと同じだよ。 

(語句と文法:数字は行数) 

19.Once you get comfortable identifying this form in the Prokofiev, you'll be able to  hear it much more easily in other pieces that follow sonata form一旦このプロコフィエフの作品でのソナタ形式を聴き取るのに安心出来たら君はソナタ形式を持つ他の作品においてもソナタ形式を聴くことが出来るようなるだろう:分詞構文(identifying) 関係詞(other pieces that follow) 

 

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セルゲイ・プロコフィエフ 

 

セルゲイ・プロコフィエフは、1891年4月27日、ロシアのソンツォフカに生まれました。当時のロシア皇帝は、アレクサンドル三世。チャイコフスキー1881年に、この皇帝の為に戴冠式行進曲を献呈しています。プロコフィエフの父は、モスクワ出身の農業技術者だった人で、大きな農場の管理監督の仕事をしていました。この農場はウクライナ地方にあって、普通に「都市」と呼べる町が、一番近い所でも数百キロは離れている、という僻地でした。最寄りの駅、でさえ、40キロ離れている有様でした。母は、実の父親が1861年農奴解放令以前はサンクトペテルブルク農奴であった境遇にも拘らず、高い教育を受けた女性でした。アマチュアながらピアノが上手で、赤ちゃんだったセルゲイを寝かしつけるのに、ベートーベンのソナタショパンのワルツを弾いて聞かせたといいます。 

(語句と文法:数字は行数) 

3.Alexander III, whose coronation march Tchaikovsky had written in 1881, was tsarアレクサンドル三世という、チャイコフスキー戴冠式行進曲を1881年に書いた人がロシア皇帝だった:関係詞・非制限用法(Alexander III, whose) 過去完了(had written) 9.His mother, whose own father had been a serf in St. Petersburg before the emancipation of the serfs in 1861, was nevertheless highly educated彼の母はその実の父親が1861年農奴解放令以前はサンクトペテルブルク農奴であったにも関わらす高い教育を受けていた:関係詞・非制限用法(His mother, whose) 過去完了(had been) 11.She was a cultured amateur pianist who played Beethoven sonatas and Chopin waltzes to soothe her baby to sleep彼女は自分の赤ちゃんをあやすためにベートーベンのソナタショパンのワルツを弾く才能のあるアマチュアピアノ奏者だった:関係詞(who played) 不定詞(to soothe) 

 

プロコフィエフは幼い頃、自宅で、母親と地元のピアノの先生たちから手ほどきを受け、音楽の感性と才能を伸ばしてゆきました。時々モスクワやサンクトペテルブルクへ行く機会があると、両親は努めてセルゲイに、オペラや演奏会を見せたり、大物音楽家と会う機会を作りました。この音楽家達が音楽院への進学を勧めてくれたのです。まず、作曲の勉強を郵便でやり取りし始めました。1904年、13歳の時、セルゲイはサンクトペテルブルク音楽院に入学を許可され、母親も同行し住まいを移したのです。 

(語句と文法:数字は行数) 

13.The young Prokofiev was educated at home by his mother and by local tutors, who encouraged his musical sensitivity and talent若き日のプロコフィエフは自宅で母親と地元の先生たちから教育をうけたが彼らはプロコフィエフの音楽的センスと才能を伸ばすことを促進した:関係詞・非制限用法(tutors, who) 18.In 1904, when he was thirteen, he was admitted to the St. Petersburg Conservatory1904年、彼が13歳の時彼はサンクトペテルブルク音楽院へ入学を許可された:関係詞・非制限用法(In 1904, when) 

 

プロコフィエフは優れたピアニストとして開花し、作曲家としては、当時の保守的な人々にとっては衝撃的な現代的な作風を打ち出しました。10年間在学の後卒業するまで、二つのピアノ協奏曲を含めて15作品を完成させ、上演も果たしたのです。「ピアノ協奏曲第2番」は、1913年の初演の際大きな波紋を巻き起こしました。教授会が嫌悪感を示すも、プロコフィエフはガンとしてこれを演奏し、卒業試験で一等賞を獲得したのです。 

(語句と文法:数字は行数) 

21.By the time he graduated ten years later, he had already completed and performed fifteen works, including two piano concertos10年後に彼が卒業するまでに、彼は二つのピアノ協奏曲を含めて15の作品を完成させ上演した:過去完了(had already completed and performed) 

 

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「この長い曲、何がどうなのか分かったとして、そこから何を学べばいいの?」と思っているんじゃないか?そう、長い形式の曲を聴くことで、君の物事に対する集中力が鍛えられるんだ。何しろその長い曲の中身について行くには、注意力を切らしてはいけないからね。仕組み、全体の形、内容がどう展開し互いに結びついているか、そんなことを聞く方法を教えてくれるんだ。長い音楽形式を学ぶと、人との会話の進め方を身に付けることが出来る。曲の中に出てくることは、それぞれお互い呼びかけ合っているものだし、そして、音楽の形式を理解するには、とにかく「聴く」ことが必要。人との会話もそうだね。そしてまた、作曲家の頭の中がどうなっているのか、覗けるし、そして多くの場合、君自身が知らなかった、より大きな、人間の感覚や積み重ねてきた経験の世界へと、君を連れて行ってくれるんだ。 

(語句と文法:数字は行数) 

3.you may think, what do I have to gain from listening to this long music, even after I've learned what's going on in it?例え何が起きているのか理解したとしてもこの長い曲を聴くことから何を得ればいいのか?と君は思うかもしれない:直接話法(what do I) 動名詞(listening to) 現在完了(I've learned) 8.It teaches you how to hear texture, shape, and the way ideas are developed and connectedそれは君に構造や形の聞き方と数々のアイデアがどのように発展し結びついているかを教えてくれる:疑問詞+不定詞(how to hear) 関係詞・省略(the way [how] ideas are) 13.It also brings you into contact with how a composer's mind worksそれはまた作曲家の頭の中がどのように機能しているかとの結びつきを君にもたらす:関係詞(how) 

 

74ページ 

 

AABA形式(32小節形式) 

 

次に見てゆくのは32小節形式だ。ガーシュウィンの名曲「アイ・ガット・リズム」がその例だ。小節、とは拍の区切りだったね。例えば「アイ・ガット・リズム」のような4/4の曲では、各小節に四つ拍が入っている、ということ。八小節から成る部分が等しく四つあるこの曲の形式。ほら、8×4=32だ。だから「32小節形式」って言うんだよ。 

(語句と文法:数字は行数) 

1.The next form we're going to look at is the thirty-two-bar song form私達が見ることになる次の形式は32小節形式だ:関係詞・省略(form [that] we're) 4.A bar indicates the way the beats are divided小節とは拍が分けられる方法を示す:関係詞・省略(the way [that] the beats are)  

 

これら等しい四つの部分を、A、A、B、そしてAと呼ぶ。四つの内三つは同じ、一つが他と異なる。最初の部分を聴いてみよう。小節を八つ数えることが出来るだろう。この部分の繰り返しが、二つ目のAだ(CD39曲目)。 

 

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Bの部分はブリッジという。Aの部分のつなぎになるからだ。実際、ここを通ると、元の主題、つまりAへ戻るんだ。でも聞くと分かるが、ブリッジの部分は、他の部分と調が異なるので、響きも異なって聞こえるだろう(CD40曲目)。 

 

そして最後のAの部分へと戻ってくる。 

 

「アイ・ガット・リズム」を演奏する時は、普通「タグ」というエンディング二小節がつく。タグ、とは、物語の終わりの処で「おしまい!」と言うようなものだ。あれは、それはそれで良いものだけど、絶対になくてはならないかというと、そんなことはない。ま、ここでは触れずにおこう。本題へ戻るよ。 

(語句と文法:数字は行数) 

13.”I Got Rhythm” normally has what we call a tagアイ・ガット・リズムは所謂タグを持っている:関係詞・慣用句(what we call) 14.The tag is like saying “The End” when a story is overタグとは物語が終わる時に「はいおしまい」というようなものだ:動名詞(saying) 16.To suit our purpose here, we're going to leave the tag at home私達の目的を達成するために私達はタグは家に置いておくことにする:不定詞(To suit) 

 

「アイ・ガット・リズム」とプロコフィエフの「古典交響曲」とは、何も共通点が無いように思えるかもしれない。「アイ・ガット・リズム」は、二・三分間で、「古典交響曲」はもっと長いからね。二つは大きく聞こえ方も異なる。でも、ほら、AABAの最初の二つのAが、「古典交響曲」の主題提示部で、B、つまりブリッジが展開部、そして最後のAが主題再現部って、これ、AABAはソナタ形式のミニチュア版ってことだよね。でも聞くのは、うんと簡単だ。理由その1:短い。理由その2:数えられる。そして理由その3:四つの内三つは全く同じことの繰り返し。「アイ・ガット・リズム」を聴いてみよう。この時、小節数を数えてみること。そして、いつブリッジに差し掛かったかチェックしてみよう(CD41曲目)。 

(語句と文法:数字は行数) 

18.”I Got Rhythm” would seem to have nothing in common with Prokofiev's Classical Symphony「アイ・ガット・リズム」はプロコフィエフの「古典交響曲」とは何の関係もないように見えるかもしれない:仮定法過去(would seem) 不定詞(to have) 19.It takes only a few minutes to play or listen to “I Got Rhythm”「アイ・ガット・リズム」を演奏したり聴いたりするためには数分しかかからない:仮主語(It takes) 不定詞(to play)  

 

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ジョージ・ガーシュウィン 

 

ジョージ・ガーシュウィン」はニューヨーク市のブルックリンで生まれました。時は1898年9月26日、当時のアメリカ大統領はウイリアム・マッキンリー。この一年後、デューク・エリントンがワシントンで生まれます。両親は、共にロシア系ユダヤ人でした。合衆国へ移民の後、数年後に二人はニューヨークで結婚し、ジョージが生まれました(ちなみに、父親の元々の姓は、ガーショヴィッツと言いましたが、移民手続をロシアからアメリカへ入る時にする際、係の役人が姓を簡略化した、とのことです。)ジョージには、兄、弟、妹が一人ずついました。家庭は、音楽一家というわけでは特になく、ジョージが12歳になる位までずっと、家にはピアノすらありませんでした。 

(語句と文法:数字は行数) 

4.Both of Gershwin's parents were Russian Jews, who had married in New York after emigrating to the USA just a few years earlierガーシュウィンの両親は二人ともロシア系ユダヤ人で、ほんの数年前にアメリカに移民でやってきた後ニューヨークで結婚していた:関係詞・非制限用法(Jews, who) 過去完了(had married) 

 

でもピアノすらなかった頃から、ジョージは既に、隣の家にある自動ピアノから流れてくる曲を覚えこんでしまっていたのです。なので、一家のアパートにピアノが来ると、ジョージはすぐさま兄のアイラを差し置いて、ピアノを独占してしまいます。ジョージは近所でピアノを教えている人達から手ほどきを受けました。その中の一人は、このように書き記しています「この子は間違いなく天才だ。とにかく音楽に夢中で、レッスンが待ちきれないと思っている。この子にとっては、時が経つのも関係なし、といった感じだ。」 

(語句と文法:数字は行数) 

12.But the boy had already been picking out tunes on a neighbor's player pianoしかしこの少年は既に隣人の自動演奏ピアノからかかっていた曲の数々を覚えこんでいたのだった:過去完了進行形(had already been picking) 14.He took lessons from neighborhood teachers, one of whom recognized his talent and energy彼は近所の複数の先生たちからレッスンを受けていたがそのうちの一人は彼の才能と熱意を見抜いた:関係詞・非制限用法(teachers, one of whom)  

 

ジョージはクラシック音楽のコンサートへ足を運んだり、ショパン、リスト、ドビュッシーピアノ曲を習ったりし始めました。しかしポピュラー音楽への興味を持ち続けたジョージは、自作を書き始めます。15歳の時、母はジョージに、ハイスクールからの退学を許し、正社員として仕事に就かせてあげました。勤め先はジェローム・H・レミックミュージック社。週15ドルで、仕事は「ソングプラガー」、つまり楽曲の売込みです。レミック社に勤めていた間、ガーシュウィンはハーレムのナイトクラブへあちこち足を運んでは、名人達の演奏を聞いて学びました。その中の一人には、ファッツ・ウォーラーという、ストライド奏法を駆使するピアニストがいました。他にも様々なアメリカ独自のピアノ演奏のスタイルを、名人達から学んでいったのです。 

 

 

 

次回、第8回は、第2章の77ページからを見てゆきます。